全脳自由帳

より考えるために書く

殺人の門(東野圭吾)

殺人の門 (角川文庫)

殺人の門 (角川文庫)

久しぶりに小説の感想を書く。2003年の作品。

「倉持修を殺そう」と思ったのはいつからだろう。悪魔の如きあの男のせいで、私の人生はいつも狂わされてきた。そして数多くの人間が不幸になった。あいつだけは生かしておいてはならない。でも、私には殺すことができないのだ。殺人者になるために、私に欠けているものはいったい何なのだろうか? 人が人を殺すという行為はいかなることなのか。直木賞作家が描く、「憎悪」と「殺意」の一大叙事詩

つらかった。とにかく暗い。ものすごく悲惨なわけではないが、不幸なことばかりが続く主人公。その話がこれでもかとばかりに細かく描かれる。これで600ページ超はつらかった。ラストの展開も「今ごろそれを…」という感じだったし。

読み終わってみると、この話には「愚かな人」しか出てこなかった。男女問わず、誰をとっても愚かなふるまいばかり。ちょっと前に読んだ東野作品「ゲームの名は誘拐」は「善人の出てこない小説を書きたかった」と作者が言っている通りだったが、「殺人の門」は「賢い人の出てこない小説」だった。

作中の年代がいつなのかははっきりとわからなかったが、どうやら1985年に相次いで起こった「豊田商事事件」「投資ジャーナル事件」が反映されているらしい。